EAT & BITE

食べたもの、作った料理を掲載します。(株)東風社 代表取締役社長 幸本陽平です。

感動を生むには、お客様の意見を聞いてはいけない

前回の記事で「満足はスタートラインであり、お客様の満足を超える”感動”を提供しなければならない」と書きました。

yoheikomoto.hatenablog.com

満足は不満の裏返しなので、「どうすれば満足するか」はある程度顕在化されてわかりやすいものです。

しかし「どうすれば感動するか」はなかなか外からはわかりません。

一体どうすればよいのでしょうか。

 マーケティングとは「お客様に聞かない」こと

一つの答えとしては「お客様に聞いてはいけない」が挙げられます。

お客様に「どんなものが欲しいですか?」「この商品がどうなるとうれしいですか?」などと聞いてはいけないのです。

これを読んで、えっ真逆では!?と思った人もいるかもしれません。

「お客様に耳を傾け、ニーズに答えることがマーケティングなのではないか」

と。

実際、私はマーケティング研修の冒頭で、

「みなさん、マーケティングってどうやればいいかわかりますか?マーケティングが成功するコツって、”お客様の意見を聞かない”ことなんですよ」

と言うと、みなさんそれは正反対でしょ???という反応になります。

最も喜ばれた会員プログラムとは?

私が化粧品ブランドのマーケティング、特に顧客の会員制組織を担当していたころのことです。

そのブランドでは会員制組織の中でも特に購入金額が多い人に、ブランドのモチーフでもあるバラの花を一輪、誕生月に送っていました。

後日、お客様に「あなたが良いと思った会員制組織のサービスは何ですか」とアンケートをとると、たいていこのバラのプレゼントが一位になるのでした。

高級化粧品ブランドを多く買うような方たちですから、ポーチやミラーなどをプレゼントしてもさほど喜びはなく、”感動”にはなりません。

しかし、直接には何かの役に立つわけではないたった一輪のバラの花の方が、”あのブランドが、私のためにバラを贈ってくれた!”という”感動”になるのです。

サプライズが感動を産む

ここでのポイントは、”サプライズ”であること。誕生月にバラを一輪だけ送ることは、あまり大々的にアピールしていませんでした。もしも「来月はあなたの誕生月ですから、バラの花を贈りますよ!」などとアピールしていたら、このような”感動”にはならなかったかもしれません。

もしもお客様に「化粧品ブランドでどういう特典があったらいいと思いますか?」と聞いたら、「バラの花が一輪欲しいです」とは答えてくれないでしょう。仮に「バラの花のプレゼントがあったらどう思います?」と聞いても「うーん、それよりも実用的なもののほうが嬉しいかな」という答えが出てくることでしょう。

だから、お客様がどうやったら感動するかは、お客様に聞いてもわからないのです。

「改良の積み重ね」ではなく「ゴールからの逆算」

ケータイ→スマホにせよ、サプライズのバラの花にせよ、大事なのは「ゴールからの逆算」です。

「電話でこんなことができれば便利なのでは?」「お客様をブランドの取り組みで感動してもらうにはどうすればいいか?」とゴールから考え、そこから逆算するのです。

画面を大きくするとか、バラを贈るとか、そういったことはあくまでも感動を生み出すための「手段」です。「こんな風に感動してもらいたい」というゴールをまず設定し、ではそのゴールにたどり着くには?と逆算するのです。

お客様に聞くべきことは

そして、「お客様に聞いてはいけない」と書きましたが、聞いてもいいことといけないことがあります。

聞いてはいけないことは、「未来」です。「この商品がどうなったらもっといいと思いますか」といった類の質問です。お客様は「今ここにないもの」を聞かれても答えられません。仮に答えても、それは実際とは的外れになります。「今ここにないもの」つまり実際にもらったわけではないバラのことを聞かれても、いいかどうか答えられないのです。

反対に聞いていいのは「過去」です。例えば「なぜその商品を買ったか」「どうやってその商品を知ったか」などです。これらは「事実」ですから、お客様も淡々と事実だけを話すことができます。

これを仕組み化、制度化したのが私の「5人聞き取り」です。お客様に聞くときは、「未来」ではなく「過去」を聞くのが基本セオリーです。

※もちろん「未来」を引き出すテクニックもあるのですが、それは専門家でないと難しいので、下手に手を出さない方が無難です。