それはお客様が本当に望んでいますか
先日、仕事の合間の休憩時間に、ネットカフェA店に入りました。
(漫画喫茶などいろいろお店の名称はありますが、ネットカフェに統一します。)
そのA店は初めて入ったお店でした。
店内は大量のマンガで圧迫され、客同士ですれ違うのもやっとでした。
ドリンク類もあまり充実しておらず、やや衛生面に欠け、昨年オープンにもかかわらずいかにも昔ながらの店舗という感じでした。
一方、先日行った別のB店は店の作りがゆったりしており、マンガとブースのエリアが分離されて機能的な導線でした。ドリンクも充実し、かつ衛生的でした。個人的にはB店の方が好みです。
ここでビジネスのヒントになるのは、「お客様は何を求めているのか?」ということです。
とにかくマンガの質・量が大事!という人はA店に行くかもしれません。
一方、私のように、仕事の途中で一息つきたい、マンガはさほど重要ではない、という人はB店に行くでしょう。
私はネットカフェのヘビーユーザーではないですし専門家でもないので、どちらの客層が多いのか、収益に貢献するのかはわかりません。
一般的によくあるのが、私のような「リラックスしたい」というユーザーが多いにもかかわらず、競合他社ばかりを見て、「マンガの数では絶対に負けない!差別化!」としてマンガを増やし、かえってお客様は離れていく…というパターンです。
簡単に言うと、「自分たちが重要だと思っていること」と「お客様が本当に望んでいること」が乖離し、お客様が離れていってしまうのですね。
それをうまく捉えて成長したのが、フィットネスクラブのカーブスです。
カーブスは年齢層が上の女性をターゲットにし、プールもスタジオプログラムもありません。
本当に運動が好きな人にとっては「物足りない」かもしれませんが、ちょっとした日常プラスの運動を求める人にとっては「ちょうどよい」わけです。
つい差別化という言葉に惑わされて、「ここが競合よりすごい、これは競合にはない」といった視点ばかり追求してしまいがちです。
本当に大事なのは競合との比較ではなく「お客様が何を望んでいるか」です。競争に意味はありません。あくまでもお客様の視点・欲求を最優先にしましょう。
伝聞形式で信頼性を高める
前回の自慢よりも自虐で書いたように、自分で自分のことをすごいぞ!とアピールする人や企業は信用できないものです。
では、どうするか?というと「第三者に言ってもらう」のです。
例えば部下や社員をほめるときも、直接「頑張っているな」と言うのではなく、
別の人に「社長(=あなた)が最近お前のことを、頑張っているな、って言っていたぞ」と伝えてもらうように仕向けるのです。
人はそのように伝聞形式で聞くと信じてしまうものです。
これは日常の商談などでも使えます。
長所や強みを伝えるときは、伝聞形式をクセにするのです。
たとえば
「長時間、バッテリーが持ちます。」
→「お取引先からは、長時間バッテリーが持つと好評をいただいています。」
「わかりやすい人事考課制度を構築できます。」
→「人事考課制度がわかりやすくなったとおっしゃっていただきました。」
といったようにです。
ここがすごいんだぞ!ではなく、そういえばこういうところをほめられましたね~という雰囲気を出すことがコツです。
長所やメリットを褒める場合は「伝聞形式」をコツにしてみてください。
自慢よりも自虐
あなたがエアコンを買いに行ったとします。
店員A「このエアコンがベストです、これ以外考えられません」
店員B「立ち上がりの時間はかかるのですが、省エネ機能がすごいので電気代は安くなりますよ」
どちらをより信頼できそうでしょうか?
なんとなく店員Bではないでしょうか。
話は変わりますが、私は先日、サーティーワンアイスクリームを食べました。
どの味にしようか…と迷っていると、先日見たTV番組を思い出しました。
その番組は「有名飲食チェーン店で人気最下位のメニューとは?」という企画でした。
ちなみに餃子の王将では「海老の甘酢」という、酢豚をエビに置き換えたメニューでした。
たしかに普通だったら酢豚を食べますし、エビを食べたかったらエビチリを頼むよな…と納得してしまいました。
同企画にサーティーワンアイスクリームもあり、人気最下位は「大納言小豆」でした。
理由は、新しいフレーバーが次々と出るのに比べ、地味で代わり映えしないから、とのこと。
私はこのTV番組を覚えていたので、じゃあどうせならあえてそれを食べてみよう!と注文しました。
確かに、普通の小豆アイスでした(笑)。
さて、餃子の王将も、サーティーワンも、もしも人気No.1メニューは?という企画だったらこのように記憶に残っていたでしょうか?
おそらく「はいはい、宣伝ね」と見ることすらなかったかもしれません。
「マイナス面を知らせる、宣伝する」というのは普通はしないことです。
でもしないからこそお客様の印象に残りますし、「わざわざ悪い点を知らせてくれた、正直だ」と信頼もしてくれるのです。
以前のエントリーで、お客様に競合を使っていると言われたら「素晴らしいですね、じゃあ何の問題もないですね」と「肯定」してあげましょう…と書きました。
これも「ライバルのことをよく言うはずがない」という先入観があるからこそ、お客様の印象に残るのですね。
良い点のアピールは、お客様もウンザリしています。
「この商品の欠点はコレです」
「人気最下位の商品はコレです」
と正直に伝えたほうが、お客様の印象に残ります。
(もちろんでも長所が…人気最下位なのは理由が…というフォローは必要です。)
「自慢」したくなったとき、あえてぐっとこらえて「自虐」してみましょう。
あなたの商品の○○を探してみましょう
「この商品の良さを一生懸命アピールしているけど、売れないんです」
研修でもコンサルティングでも、このような相談をよく受けます。
ではその商品の良さって何ですか?と聞いてみると、企業側の人が一方的に思っている「良さ」だったりします。
「買うこちらにとっては、それって別にどうでもいいんだけど...」
なんですね。
たとえば車を販売店に見に行ったら、車の紹介ではなく、ローン金利ゼロだとか、カーナビ無料だとかそんな話ばかりをされた、こちらはもっと車について知りたかったのに...といった経験はないでしょうか。
もちろん中には安さやお得さが一番、車の性能や機能については二の次、という人もいるかもしれません。
でも車について知りたい、と思っているのに「お得ですよ」ばかりアピールされても、そうじゃないんだけど...となってしまいます。
このような「良さのすれ違い」を避けるためには、どうすればよいでしょうか?
あなたの商品の「実は○○なんです」という、「実は」を探してみてください。
この「実は」というさじ加減、つまり
「売る側のこちら側は知っていて当然だけど、買う側のお客様は意外と知らない」
「知らないことで損をしたり残念な思いをしたりする」
という点がポイントです。
「へぇ、そうなんだ!知らせてくれてありがとう」
と言われるようなことですね。
たとえば私は以前、化粧品会社で働いていました。
日焼け止めにはSPFという数値があります。SPF50、SPF30といった数値は見たことがあるかと思います。
この数値、「紫外線をブロックする強さ」だと思っていませんか?実はそうではなく「紫外線をブロックする時間の長さ」なのです。つまりSFP50も30も強さは同じで、持続時間の違いなのです。
「SPFが高いものがほしいけど、そうするとベタついたり落としたりするのが大変で」
というお客様には上記のことを教えて「だからSPF30でもこまめに塗り直せば実は一緒なんですよ」と教えてあげると「へぇ!」と関心され、お買い上げにつながりました。
もちろん「実は...」は、単なるウンチクや面白いだけの話ではダメです。
「へぇ!」「それはいいね!」
こう言われるようなことがその商品の本当の「良さ」や「強み」です。
そのようなことを探し、お客様に適切に伝えましょう。
「得をする」よりも「損をしない」ことを優先すべき理由
サンドイッチチェーンの「サブウェイ」がアメリカでも日本でも閉店数を増やすなど苦境だ、というニュースを最近見ました。
(正直なところ、記事内の日本の閉店理由については本当にそう?と首をかしげる箇所もあるのですが...)
本当の閉店理由は別として、ある人がネットに書いていたことが印象的でした。
「サブウェイってカスタマイズが自由にできるのがかえって面倒、ってのもあるけど、いろいろカスタマイズがあるとそれをしない人やよくわからない人にとっては”自分は損をしている”って感覚になるんじゃないのかな」
特にこの後者の意見は考えさせるものがありました。
前者の「自由であることはかえって面倒」というのは、私がYouTubeの90秒マーケティング内でもお伝えしていたことです。
90秒マーケ_013 ■JALどこかにマイルに学ぶ~決めてあげる
後者の「カスタマイズなどをしない・わからない人に”自分は損をしているのでは”と思わせてしまう」というのは、なるほどと思いました。
人間は自分が損をすることには敏感だからです。
私が小さい頃のことを思い出しました。テレビゲームがどんどん複雑化していき、あるゲームは「クリア後のやりこみ要素」や「隠しキャラや隠し設定」がたくさんあることがわかりました。
そうなると、そこまでそのゲームに詳しくなく、普通に楽しんで普通にクリアするだけの自分は何だか損をしている気持ちになってしまいました。同じ5千円を払っても、5千円分を楽しんでいないような感覚になるわけです。それ以来、そのゲームのシリーズは買わなくなってしまいました。
カスタマイズ自由!思い通りの設定に!こんなにいろいろできます!とアピールすることは、確かにマニア層など詳しい人は呼び込むことができます。
しかし場合によっては「そういうのはよくわからない、わからない私は損をしている」と思われてしまう可能性もあります。
人間は「得をする」ことよりも「損をしない」ことを優先します。
「お得ですよ!」とアピールするよりも、
「これを選べばあなたは損をしませんよ!」
というアピールをした方が有効な場合が多いので、うまく活用しましょう。
値段の付け方、常識や慣例を見直してみましょう
先日、あるコーヒー豆のお店を訪れました。
そのお店は生豆をその場で好みの度合いで焙煎してくれます。
変わっているのがその売り方です。
透明プラスチックのカップに生豆が入っていて、どれも一律「千円」なのです。
たとえば100g500円の豆だったらカップには「200g」、100g250円の豆だったらカップには「400g」入っているのです。
普通、コーヒー豆はお肉屋さんのお肉のように「100gあたりいくら」という売り方をしているものです。
それをひっくり返して「千円で固定、量は豆に応じてバラバラ」という値付けは面白いなと思いました。
あなたの商品の値段の付け方も、見直してみると面白いかもしれません。
無いものは、無い
「画期的なアイデアに実は新しいものはない。すべては既存のアイデアの組み合わせだ」
このように言われることがあります。
人は0→1のように画期的なアイデアを生み出すことを期待します。
しかし現実には難しいものです。
それはなぜかというと、私がよく言うのは
「ないものは想像できない」
からです。
私の「90秒マーケティング」でも、iPhoneを例に紹介しています。
今でいうガラケーしか無いころ、「あなたはどんなケータイが欲しいですか?」と質問しても、
「かまぼこ板みたいな形で、表面全体が画面で、タッチで操作できて、アプリをダウンロードできて...」
と答える人はまずいません。
今、私たちはスマートフォンが当たり前ですから「そんな携帯電話があったら便利だ」と想像できます。
しかしスマホが存在しない時代は、スマホを想像することすらできなかったわけです。
※実際、iPhoneが日本で発売されたときも、日本では売れないだろうという声が大半でしたね。
気をつけなければいけないのは、私たちはこれと同じことを人材育成や部下指導でもしてしまいがちである、ということです。
たとえば部下に「新規開拓の方法を見直せ」と言ったとします。
もしその会社がテレアポ中心に新規開拓をしているのなら、他に飛び込み営業、広告掲載、展示会、セミナー...といった方法が考えられます。
しかしもしかしたら、社員がテレアポしか知らないと、
「テレアポ以外の新規開拓の方法???検討もつかない」
と、検討を開始することすらできないかもしれません。
これは極端な例としても、もっと抽象的な指示、たとえば「業務改善を考えて提案しろ」といった場合にもこのようなことがよく起こります。
その指示を出した人(経営者、役員、管理職)にとっては業務改善とはこういうことで...たとえばこんな風に...とぱっと思い浮かぶでしょう。
ところが社員は「業務改善って???」と完全に止まってしまうことがあるのです。
やってみたけど失敗する、のですらなく、何から手を付けたらよいかわからないのですね。
そして「一週間も前に指示を出したのに何も手を付けていないだと!どういうことだ!」と社長の怒りが爆発する...というのはよくあることです。
もちろん社員を甘やかしてはいけませんが、大事なのは「適度に分割する」ことです。
たとえば業務改善と言われたら難しいでしょうが、
「今、製造ミスが5%あるので、それを3%に減らす方法を考えてくれ」
「蓄積された資料を効果的に今の業務に活かすにはどうすればいいか考えてくれ」
などであれば、不慣れな社員も動けることでしょう。
「こっちの言いたいことを汲んで、ツーカーで動けるようになってほしい」
という気持ちも確かにわかります。
しかし部下や新入社員はあなたよりも圧倒的に知識や経験が少ないのです。
「ないものはわからない」のです。
指示をなるべく分割・具体化して、「はっきりと想像できる」レベルに落とし込んであげましょう。