あなたの思いは伝わらなくて当たり前
ある広島の食品会社を支援したときのことです。
(以下、実例のため、名前などを公開できず内容が抽象的になることをご容赦ください)
その食品は割と高額の嗜好品で、かつ日持ちがするものでした。
現在は広島を中心に販売していますが、将来的には、東京などへの全国展開を考えていました。
私が指摘したのはその商品名です。
続きを読む【ゴディバとローソンの共同開発】から学ぶ ~ 顧客接点を創造する
ローソンがゴディバと共同開発したロールケーキを発売します。
価格は税込み395円と、過去のロールケーキでも最高価格です。
この件を「ブランドだから高いよね」で終わらせることなく、「顧客接点」という視点で、自分のビジネスに応用できないかを考えてみましょう。
3週間の期間限定で、6月6日から販売を開始した。カカオの香り高いチョコレートクリームを、チョコレートのスポンジケーキで包んだ。まさにチョコづくしの商品。250万食限定で、発売初日だけで20万食が売れた。
初日に20万食!と聞くとすごそうですが、ローソンの店舗数は13,111店舗(2017年2月末時点)。1店舗あたり約15食ですから、妥当な数字のように思えます。
では、なぜローソンとゴディバはこのロールケーキを投入したのでしょうか。
双方にとっての「顧客接点」という視点で考えてみましょう。
1.ゴディバにとって「エントリー客の獲得」
ゴディバは昔は高級チョコレートの代名詞のような存在でした。
海外旅行のお土産でもらったことがある、という方も多いのではないでしょうか。
しかし最近はバレンタインデーの時期にはセブンイレブンでも取り扱っていますし、日本全国のショッピングモールにも店舗を儲けています。
「ブランドを安売りして毀損している」という見方をする人もいるかもしれませんが、このような販売の拡大で、日本での売上を伸ばしているのも事実です。
詳しくは書籍「ターゲット ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?」にも書かれています。
ターゲット ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか? | ジェローム・シュシャン |本 | 通販 | Amazon
グローバル化によって世界との距離が縮まった、という一方で、国によってブランドの扱いを変えるのはよくある手法です。
たとえば中国では、ナイキやアディダスといったスポーツブランドは、ラルフローレンのようなアパレルのブランドと同列に位置づけられています。
ゴディバの場合、反対に日本では「もっと身近なブランドイメージと商品にすべき」という判断があったのでしょう。
特に最近は、シェイク状のドリンクなどで顧客にとって手に取りやすい存在になっています。
このロールケーキも、まずはエントリーとして購入してもらい、ゴディバの世界に一歩を踏み入れてもらいたい、という狙いなのでしょう。
2.ローソンにとって「わざわざ客」の獲得
一方、ローソンにとってはどうでしょうか。
コンビニは、一昔前までは「24時間開いている定価販売の店」くらいの位置づけで、さほど企業間の差は意識されていませんでした。
ところがどうでしょう、最近は
「セブンイレブンの◯◯アイスがおいしい」
「ファミマの◯◯チキンが好き」
と指名買いされています。
特に最近ではセブンイレブンがアイスクリームでヒット商品を連発しています。
ローソンもこのように「わざわざ」買ってくれる商品が必要だったことでしょう。
もちろん従来のロールケーキなど、これ以前にもヒット商品はあったのでしょうが、「あのゴディバの」ケーキ、となるとそれを目当てにやってくるお客さんは増えるはずです。
そしてそれをきっかけに「ローソンのケーキっておいしいね」「今度違うのも食べてみよう」と習慣になれば...といったところではないでしょうか。
特に最近ではSNSを意識した商品づくりも盛んです。
ただの「おいしいチョコロールケーキ」ではなく、「ゴディバのチョコロールケーキ」となれば、SNSに画像をアップしよう、という話題作りにも貢献するでしょう。
3.あなたは誰に買ってほしいのか
今回、ゴディバとローソンは「自社が売りたい客に届けることができる」という点で利益が一致した、といえるでしょう。
ただ漠然と「いい商品を多くの人に売りたい」では、ヒット商品にはなりません。
ゴディバにとっては「ゴディバを手に取ってもらうきっかけにしてほしい」、ローソンにとっては「わざわざローソンのスイーツを選んで、さらにSNSで広げてもらいたい」とお互いの「届けたい客」がうまく一致しました。
あなたも新商品を開発したり、既存商品を拡販したりするときは、モノありきではなく、「誰に」届けたいのかをまずはじっくり考えてみましょう。
■■■このニュースから学べること■■■
1.すべてのお客さまが自社(商品)に詳しいとは限らない。まずはエントリー客にアプローチし、裾野を広げる。
2.SNSにアップしたくなる商品を用意し、「わざわざ客」を確保する。
3.誰に買ってほしいか、から商品や宣伝を逆算する。
「誰に売るか」を調べる際は、5人聞き取りがぴったりです。
ぜひご活用ください。
【吉野家の出前】から学ぶ~強み弱みを他社と補完する
吉野家がデリバリーに本格参入するのだそうです。
都心のランチは混み合いますし、毎日コンビニというのも飽きるので、需要は高そうです。
とはいえ、単価の低い牛丼で、出前のための人材やバイクを抱えたら、吉野家は採算が合わないのでは?と思ったのですが、どうやらそうではなさそうです。
(前略)
夢の街創造委員会社が運営するシェアリングデリバリーサービス「出前館」に参入する、という形によってである。
出前館の「シェアリングデリバリー」は、飲食店と、配達機能を持つ拠点(新聞販売店ASAなど。シェアデリ拠点と呼ばれる)がそれぞれに出前館に加盟することによって機能する。
配達は吉野家ではなく、出前館に加盟した新聞販売店などの「シェアデリ拠点」が行います。
これは今流行りのUberEATS、そしてAibnbなどと同様に、まさに「シェアリングエコノミー」ですね。
新聞は今後、ますます発行部数の低下が予想されます。さらに、朝刊と夕刊は配達時間が決まっており、ちょうどランチタイムは手が空く時間なのでしょう。販売所はその空いた人員と配達設備などを有効利用することができます。
注文そのものは、インターネット上のサイトである「出前館」が受け付ける。
実際に注文が入ると、店舗は指定時間で調理を行い、シェアデリ拠点はバイクと配達員を使って、その商品の配達を行う。
吉野家側としては、受注の処理とその調理だけを行えばよいわけです。
配達や、それに関わる代金の管理などをしなくてすむのは、直接の追加コストがほぼゼロといってよいでしょう。
ちなみに最低注文条件は、恵比寿店の場合「税込 1800 円~(配達料除く)+送料:300 円」とのこと。
また、牛丼の値段は店舗と異なり、たとえば並盛は店舗:380円、配達:570円です。
仮に6人前を注文すると、並盛ひとつあたり620円となり、店舗の380円よりはかなり割高です。しかし恵比寿という都心で、時間がないときや大雨のときにも温かいランチが食べられる、と思えば妥当な価格ではないでしょうか。
自社と他社で強み・弱みを補完できないか
吉野家は「出前をしたいが、そのための設備や人員を抱えるのはコストやリスクが高すぎる」という悩みがあります。
一方、新聞販売店は「設備や人員はあるのに、それを利用しない時間が発生する」という悩みがあります。
出前館が介在することで、両者の強み・弱みがうまく補完しあったと言えます。
これは見方を変えれば、自社の弱みをどんな会社だったら補完してくれるか?
逆に、自社の強み(=当たり前のこと)は、どんな会社にとって価値があるか?
...と考えることで相互作用が生まれるのです。
4PのPlace=流通で売上を拡大できないか
吉野家は「あまりコストをかけずに売上を伸ばしたい」という課題があります。
売上を伸ばしたいと考えるとき、次の2×2=4通りのパターンがあります。
「既存商品 or 新商品」×「既存市場(既存顧客) or 新市場(新顧客)」
「何を」「誰に」売るか、の組み合わせですね。
ここでの狙い目は「既存商品 × 新市場」です。
つまり「すでにある商品を、今は買っていない人に買ってもらう」のです。
吉野家は「宅配」がそれにもっとも適したやり方でしょう。
(「レトルト品を作って売る」などもありますが、宅配に比べると商品開発を必要とします。)
この吉野家のように「今すでにある商品を、今は買っていない人に買ってもらうにはどうすればいいか?」を考えるとき、流通=新販路で売る、のは最もよくあるパターンです。
売上を伸ばしたいときは、いきなり奇策に走るのではなく、「違う流通経路で売れないか」と考えてみるのです。
プラットフォームになる
このニュースで忘れてはならないのは、出前館というプラットフォームの存在です。
吉野家が牛丼を作り、新聞販売店がそれを配達する、という「場」が出前館です。
出前館という場があるからこそ、吉野家や新聞販売店がそれぞれ受注サイトや受注システムを作る必要がなく、それぞれの業務にだけ集中することができます。
このような企業同士を結びつけるプラットフォームをうまく作ることができると、安定的な収益を確保することが可能になります。
■■■このニュースから学べること■■■
1.自社ですべて行おうとするのではなく、強みと弱みを補完できるパートナーと組む。
2.「既存商品 × 新市場(新顧客・新流通)」で売上を伸ばす。
3.プラットフォームを提供することで安定的な収益を確保する。