EAT & BITE

食べたもの、作った料理を掲載します。(株)東風社 代表取締役社長 幸本陽平です。

【吉野家の出前】から学ぶ~強み弱みを他社と補完する

吉野家がデリバリーに本格参入するのだそうです。

都心のランチは混み合いますし、毎日コンビニというのも飽きるので、需要は高そうです。

とはいえ、単価の低い牛丼で、出前のための人材やバイクを抱えたら、吉野家は採算が合わないのでは?と思ったのですが、どうやらそうではなさそうです。

www.zaikei.co.jp

(前略)

夢の街創造委員会社が運営するシェアリングデリバリーサービス「出前館」に参入する、という形によってである。
出前館の「シェアリングデリバリー」は、飲食店と、配達機能を持つ拠点(新聞販売店ASAなど。シェアデリ拠点と呼ばれる)がそれぞれに出前館に加盟することによって機能する。

 配達は吉野家ではなく、出前館に加盟した新聞販売店などの「シェアデリ拠点」が行います。

これは今流行りのUberEATS、そしてAibnbなどと同様に、まさに「シェアリングエコノミー」ですね。

新聞は今後、ますます発行部数の低下が予想されます。さらに、朝刊と夕刊は配達時間が決まっており、ちょうどランチタイムは手が空く時間なのでしょう。販売所はその空いた人員と配達設備などを有効利用することができます。

注文そのものは、インターネット上のサイトである「出前館」が受け付ける。

実際に注文が入ると、店舗は指定時間で調理を行い、シェアデリ拠点はバイクと配達員を使って、その商品の配達を行う。

 吉野家側としては、受注の処理とその調理だけを行えばよいわけです。

配達や、それに関わる代金の管理などをしなくてすむのは、直接の追加コストがほぼゼロといってよいでしょう。

ちなみに最低注文条件は、恵比寿店の場合「税込 1800 円~(配達料除く)+送料:300 円」とのこと。

また、牛丼の値段は店舗と異なり、たとえば並盛は店舗:380円、配達:570円です。

仮に6人前を注文すると、並盛ひとつあたり620円となり、店舗の380円よりはかなり割高です。しかし恵比寿という都心で、時間がないときや大雨のときにも温かいランチが食べられる、と思えば妥当な価格ではないでしょうか。

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自社と他社で強み・弱みを補完できないか

吉野家は「出前をしたいが、そのための設備や人員を抱えるのはコストやリスクが高すぎる」という悩みがあります。

一方、新聞販売店は「設備や人員はあるのに、それを利用しない時間が発生する」という悩みがあります。

出前館が介在することで、両者の強み・弱みがうまく補完しあったと言えます。

これは見方を変えれば、自社の弱みをどんな会社だったら補完してくれるか?

逆に、自社の強み(=当たり前のこと)は、どんな会社にとって価値があるか?

...と考えることで相互作用が生まれるのです。

4PのPlace=流通で売上を拡大できないか

吉野家は「あまりコストをかけずに売上を伸ばしたい」という課題があります。

売上を伸ばしたいと考えるとき、次の2×2=4通りのパターンがあります。

「既存商品 or 新商品」×「既存市場(既存顧客) or 新市場(新顧客)」

「何を」「誰に」売るか、の組み合わせですね。

ここでの狙い目は「既存商品 × 新市場」です。

つまり「すでにある商品を、今は買っていない人に買ってもらう」のです。

吉野家は「宅配」がそれにもっとも適したやり方でしょう。

(「レトルト品を作って売る」などもありますが、宅配に比べると商品開発を必要とします。)

この吉野家のように「今すでにある商品を、今は買っていない人に買ってもらうにはどうすればいいか?」を考えるとき、流通=新販路で売る、のは最もよくあるパターンです。

売上を伸ばしたいときは、いきなり奇策に走るのではなく、「違う流通経路で売れないか」と考えてみるのです。

プラットフォームになる

このニュースで忘れてはならないのは、出前館というプラットフォームの存在です。

吉野家が牛丼を作り、新聞販売店がそれを配達する、という「場」が出前館です。

出前館という場があるからこそ、吉野家や新聞販売店がそれぞれ受注サイトや受注システムを作る必要がなく、それぞれの業務にだけ集中することができます。

このような企業同士を結びつけるプラットフォームをうまく作ることができると、安定的な収益を確保することが可能になります。

 

■■■このニュースから学べること■■■

1.自社ですべて行おうとするのではなく、強みと弱みを補完できるパートナーと組む。

2.「既存商品 × 新市場(新顧客・新流通)」で売上を伸ばす。

3.プラットフォームを提供することで安定的な収益を確保する。

 

マーケティングとは売り方ではなく「本質」

ある企業でマーケティング研修をしたときのことです。

その企業は食品を扱うので、研修の最後に「食品の◯◯をもっと売るにはどうすればよいか」という課題を出しました。

それまでに研修でさまざまなポイントを指導しているので、それに沿ったよい提案をしてくれました。

ターゲットを設定して...想定ユーザーの現状をよく理解して...ベネフィットを提供して...と、一見きちんとなされているように思えます。

しかし、残念ながら肝心な部分が抜けていました。

提案内容が「売り方」、厳しく言えば「小手先の販促案」に偏っていて、肝心の「本質」が抜けているのです。

本質というと大げさかもしれません。「まずはこれでしょ」という重要ポイント、くらいに思ってください。

では、食品を売るうえでの本質とは?

決して特別なことではなく、食品ならば「おいしい食品を売る」といったことです。

もちろんおいしいから絶対売れる、とは限りませんが、食品をたくさん売るのに最初に考えるべきは、まずは「おいしい」ことでしょう。

ところが「マーケティング」を考えてください、というと身構えてしまい、「売り方」に走ってしまうのです。

私は研修の冒頭にマーケティングは売り手も買い手も幸せになることだ」「だから、買い手がどうなれば幸せかを第一に考えなければ」と強調したつもりでしたが、なかなか伝えるのは難しいものです。

(もちろん私の教え方の問題かもしれませんが...)

マーケティングに限らず、何事も表面的なテクニックよりも「本質」です。

迷ったとき、困ったときこそ小手先に走らずに「この本質ってなんだっけ?」と立ち返るようにしたいものです。

 

 

わかりやすい文章を書くたった一つの方法

文章のわかりづらさの原因は

ありがちなタイトルですみません(笑)。

私は5人聞き取りを中心にした、企業向けマーケティングを主に行っています。

その中で、社員の方に課題を与えたり、研修のようなことをする場合もあります。

課題の中には、社員の方にまとまった文章を書いてもらうこともあります。

ところが、多くの方は、そのようなまとまった文章を書いた経験があまりありません。そのため、読みづらくわかりにくい文章になっていることが少なくありません。

「なぜ、読みづらくわかりにくいのか」

を考えたところ、一つの結論に達しました。

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【SNS映え撮影サービス】から学ぶ~成果を絞り込んで限定する

SNS映え」は最近よくみる単語です。

「インスタ映え」なんて言い方もありますね。

単に美しい、芸術的な写真と、SNSで目を引く写真は別のようです。

そんな「SNS映え」する写真を撮影してくれるサービスがあるそうす。

torutte.jp

インスタグラムなど写真中心のSNSでは、「SNS映え」が行動を左右するポイントと言われています。
トルッテは、そんな「SNS映えする写真が欲しい」クライアントと、「SNS映えする写真撮影に特化した」ソーシャルグラファーをつなぐ出張撮影マッチングサービスです。

最近、特に飲食店では「SNS映え」することを前提にしてメニューが作られている、と感じます。

少し前ですと「ローストビーフ丼」がそうです。

考案された方は、「SNSに載せたくなるような盛り付けにしよう」と、最初からSNS映えを狙っていたそうです。

また、アメリカのスターバックスの「ユニコーンフラペチーノ」もまさに同様ですね。

www.instagram.com

1.第一印象こそがすべて

このように「中身よりも見た目」という風潮に、眉をひそめる人もいるでしょう。

(正直なところ、私もそうです。)

しかしインターネット、特にSNSでは、情報が膨大に流れています。

それを一つ一つ精査している時間はありません。

その中で目を止めてもらうには、第一印象でひきつけるしかありません。

そのときにSNS映え、は重要なテーマです。

前述のスターバックスのように、「いかにSNS映えするか」を起点に商品開発をしている企業も少なくありません。

2.新たな価値観、専門家を提示して成果を限定する

サービスを提供するtorutte(株式会社CCCフォトライフラボ)では、そのようなSNS映えする写真を撮影する専門家のことを

ソーシャルグラファー™」

と名付けました。

「プロフォトグラファー」などの既存の名称よりも、より専門的な印象がありますね。

このように独自の名称をつけると、浸透に時間がかかるという欠点はあるものの、その業界では第一人者になれる、という長所があります。

ただ漠然と「いい写真を撮る」ではなく、「SNS映えする写真を撮る」と限定した成果を言い切ってしまった方が、依頼者側もイメージしやすいはずです。

3.アイドルエコノミーにも対応

私はiPhoneではないので、そのソーシャルグラファーの人物像、また値段設定などは把握できていません。(Android版も出してほしいところです。)

おそらく登録しているソーシャルグラファーは、写真館を営んでいるような人や、撮影の専門家よりも、あくまでも「SNS映えのプロ」のような人が多いのではないでしょうか。趣味、もしくは業務の一部でSNSを活用していて、その結果、SNS映えする画像の撮影が得意になった、というような人たちです。

そうなると、「カタログ写真のようにプロカメラマンに頼むほどではないけど、魅力的な画像が欲しい」というニーズにはぴったりではないでしょうか。わかりやすく言えば、AirbnbUberのカメラマン版です。

■■■このニュースから学べること■■■

1.第一印象がすべて。第一印象の見た目の良さにもっとお金や労力を投下する。

2.価値を絞り込んで提示することで、顧客側のメリットをわかりやすくする。

3.スキルを限定し、提供したい人と利用したい人をうまくつなぐ。

 

【24時間営業のジム】から学ぶ~顧客のストレスを取り除く

福岡を中心に展開する西日本新聞のサイトに、このような記事がありました。

qbiz.jp

同区の会社員井手静さん(28)は1歳の長男を寝かしつけた後、夫に子どもを任せてジムに来ることがあるという。「子どもがいるので、営業時間が決まっていると来られないこともある。24時間いつでも使えるのが気に入っている」と汗を拭った。

(中略)

設備を限定することで270平方メートル前後と総合型の10分の1程度の広さで出店でき、初期投資や維持費も抑えられるという。室内に防犯カメラを設置するなどして安全性を確保しつつ、夜間はスタッフを常駐させないことで人件費も抑えている。

「何でも使えて1万円払うより、使えるものが限られても7千円のサービスが支持される時代。消費者の価値観が変わってきている」と土屋副社長は言う。

 私個人がフルサービスのジムの入会を検討しても、結局やめてしまった理由が、まさにこの「時間」でした。

「時間を区切った安いプランにしようかな、でもその対象外の時間に行きたいときもあるだろうしなあ」

このようにプランで悩むこと自体がストレスになってしまい、結局は入会をやめてしまいました。

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1.フィットネスジム=LCC

詳しくは本文を読んでいただくとして、このジムは「やること」と「やらないこと」を明確にしています。

たとえばこのジムはプールやスタジオがないそうです。そのため、水泳やエアロビクスをしたい人は入会しないことでしょう。その代わりに様々な経費が抑えられています。

ちなみに同ジムの料金を調べたところ、月会費6,800円+税で、通常のフルサービスのジムの半額ほどになっています。これなら確かにジムやスタジオがなくても「まあいいか」と思える価格ですね。

このように「絞り込む代わりに安くする」のは、LCCなどと同じく最近のトレンドです。

2.「いつでも行ける」安心感

コンビニも、今では24時間営業は当たり前ですが、昔は「客がいない深夜に開けておくのは非効率だ」と言われていました。

しかし「24時間いつでも開いている」という安心感や信頼感が長年に渡って蓄積されたからこそ、現在このようにコンビニは普及したのです。

(今では一巡して、24時間開けなくてもよいのでは、という議論がありますが...)

このジムが24時間営業することは様々な理由があるでしょうが、単純に「便利」というよりも、「入会や利用時に悩むストレスを減らしているから」とも言えるかもしれません。

3.24時間営業の店=ブッフェレストラン

そういった意味では、「ブッフェレストラン」と共通かもしれません。

最近のショッピングモールはブッフェレストランが多く店を構えています。

ブッフェが人気の理由としては、単にお腹いっぱい食べたい、店側はオペレーションがラク、といったこもあるでしょう。しかし、それだけでなく、

「お客さまにとっては、料理の種類や家族の好みを気にしなくてもよい」

というのが大きいのではないでしょうか。

ブッフェならとりあえず一通りいろいろな料理があり、料理に悩む必要がないからです。

「いかにお客さまのストレスを減らすことができるか」がマーケティングには重要です。

 

■■■このニュースから学べること■■■

1.絞り込むことで、顧客のニーズに合致した価値を適切な価格で提供する。

2.顧客が選択や決断するためのストレスを可能な限り減らす。

 

【グンゼ スリーピーワン】から学ぶ~「声なき不満」を拾い上げる

グンゼの面白い商品を発見しました。

グンゼ公式サイトより】

そのまま寝れる そのまま出れる リラクシングウェア「スリーピー ワン」デビュー | ニュースリリース | 企業情報 | グンゼ株式会社

若年層を中心に、パジャマ・ルームウェア離れが進んでいます。彼ら、彼女たちはお気に入りだったアウターのお下がりを部屋着にしています。こんな部屋着があったらいいのにな。部屋着だけど眠りも快適でちょっと外に出るにもオシャレ。「スリーピー ワン」はそんなコンセプトのリラクシングウェアです。

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直感的に私は「あっ、いいかも」と思いました。

出張のとき、私はTシャツと短パンをよく持っていきます。

そのまま寝られるし、隣のコンビニくらいなら行くことができるからです。

しかしこれらは、外出着としてはだらしないし、かといってパジャマでもなく、中途半端だと個人的には思っていました。

とはいえ、すごく困るというほどではないので、「まあこういうもの」と半分あきらめていました。

そのため、同製品のコンセプトはすごくしっくりときました。

同商品のマーケティングで重要なポイントは2つあります。

 

1.お客さまの「声なき不満」を見つけ出し、商品化していること

おそらく「出張のときの寝間着に困っている!」「寝間着と外出着がいっしょになった服が欲しい!」などと、不満や要求について大きな声をあげている人はほとんどいないことでしょう。

しかし私のように漠然と「とりあえずTシャツをパジャマにしている、パジャマをわざわざ買うほどではないから、まあいいか」という人も一定数はいるはずです。

そういった「今、困っていないけれど、実はこういう不満や困りごとがあるんじゃない?」という欲求を拾い上げることは、マーケティングにとって大切です。

※実際には、ウェブサイトにあるように、「若者はTシャツをパジャマ代わりにしているのでパジャマが売れない、どうにかできないか」から始まったのだと思います。そこで「なんとかパジャマを着てもらおう」ではなく、「ではどのような商品なら最適か」から出発している点がすばらしいと思います。

 

2.「組み合わせる」をうまく活用していること

私の書籍「今ある在庫がみるみる売れる12の方法」でもご紹介しているように、「組み合わせる」は新商品開発において有効なアプローチです。

これも「外で着る服」と「寝るときの服」を一緒にできないか?と考えた、と言うことができるのではないでしょうか。

ここで大事なのは、常識や当たり前を疑い、なるべく遠くのもの同士を組み合わせることです。

「いやいや、外出着とパジャマは別物に決まっているでしょ」と考えては、このようなアイデアは生まれません。

「組み合わせる」はマーケティングにおいて非常に有効な考え方です。

 

■■■このニュースから学べること■■■

1.顧客の「声なき不満」に注目し、「それならぴったり!」を提供する。

2.「組み合わせる」ことで顧客の問題を解決する。

 

顧客の声なき不満を拾い上げるには、ぜひ5人聞き取りを活用してください。

謙遜は損

学校で先生に指名されて「答えが合っているかどうかわかりませんが...」

上司に頼むよと言われて「うまく行くかわかりませんが...」

こんな風に前置きをするのがクセになっている人はいないでしょうか。

これは「自己ハンディキャッピング」と呼ばれる行為です。

 

なぜこのように言ってしまうかというと、このように言っておくことで相手の事前期待を減らし、うまくいかなかったときに責められる可能性を減らすことができるからです。

しかしこの「自己ハンディキャッピング」はやらない方がいいでしょう。

 

一つは、この自己ハンディキャッピングをすることで自分自身に「だから、うまくいかなくても仕方ない」と暗示をかけてしまい、心にブレーキをかけてしまうからです。

 

もう一つは、相手にとっていい印象を与えないからです。

質問をされて「合っているかわかりませんが...」と言った場合、言われた相手の心情を考えてみましょう。

■合っていたとき...「でも自信はなかったんだな、たまたまだな」

合っていなかったとき...「やっぱり合っていなかった」

 

結果が正解でも間違いでも、そのように言って得をすることはありません。

謙遜をしているつもりが、「損」でしかないのです。

 

いきすぎた謙遜は、マイナスの印象しか残しません。

つい「合っているかわからないのですが...」と口ぐせが出てしまう人は、気をつけたほうがよいでしょう。